かなーり懐かしい思い出を書き留めておこうと思います。そういう条件が今も無いわけではないのですが、リニューアル前の福島競馬場というのは、ローカル、平坦、小頭数小回り直線短しという先行馬大好き人間には天国のようなコース形態でした。更にその開幕週という即昇天( ´∀` )の条件を追い求めて、結婚する前の妻と新幹線に乗って向かったことがあります。今から30年前のこと。
当時から、とにかくパドックで馬を見るのが好きだった。見て何が良いとか悪いとかじゃなかった。ひたすら直感に訴えかけてくる馬を探していたといった方がいいでしょうか。それは「好気配を示す馬」だったんでしょうね、今思うと。当時26そこいらのガキんちょが生意気にパドック見て何が判るんよ、って言われたら何も反論できませんしするつもりもありませんが、そこから遡ること3年半前の有馬記念(1992)の日に中山競馬場に行ってパドックで一番人気のトウカイテイオーを見て「これ絶対来ないからね」と言い切ってレガシーワールドの単勝握りしめて二人で悶絶死したくらいには判る程度です( ´∀` )なんとまあ運のない(笑)
当時から「競馬にお金使いすぎ!」とたしなめられてはいましたが、そうですねえ、まだ三連単とかなかった時代で、馬連すら画期的な時代だったので。馬券はそれをせいぜい2、3点、1レース1,000~3,000円くらいでしたね。それでも「ホント一桁多いからね?」と口酸っぱく言われていました。彼女は銀行員だったのでね。私は決まって「これ自信あるからさ」と返す程度。それをあまり結果で示すことはできていなかったのは確かですね。根拠もなく買い目を絞るのが当時の私の馬券スタイルでした。それは今もあまり変わっていません、というよりむしろ悪化傾向( ´∀` )
ま、夏の福島競馬って、その当時はダービーが終わりエプソムカップも終わってクラス編成変え直前の頭数の揃わない寂しいものでした。直前の府中で稼ぎ損ねたクチがそういう状況を狙って使ってくるか、このコースに照準を合わせてかでしたね。そして先行馬が好きな私は大レース&府中開催であまり良い結果が出ず、それを引き摺っての旅打ち、しかもそれに彼女を巻き込むという、ひでえ男だわ( ´∀` )
そういう状況なのでとにかく結果だけが求められる(真横から)わけですから真剣勝負です。ウンチクはいいから当てて見せてよ、って感じですね。朧げな記憶ではチョイ負けくらいの状況でしたかね、当時から私は全レースは買わない、って感じだったので。土日の日程の初日だったので投資金額も控えめ(にせざるを得ないボーナス前だし)。で、迎えたのがメインレースの栗子特別(900万下、芝2000m)、今で言う2勝馬クラスのレースで9頭立てと地味目の極み。
競馬新聞の◎は揃って柴田善臣のタヤスエースでした。で、彼女はヨシトミファン(強いて言えばタイプって程度)なので、ここは堅くいくよね?って私に訊きました、というよりは「念押し」してきました。私は「ピンとこないなぁ、切ろうかな」とにべもない返事。9頭なのでじっくりと観察して「パドックだけなら断然2番なんだよね」その馬はフィアラ(父パレスダンサー、母チェスタークイン、母父コインドシルバー)中央転厩緒戦のマル地、休み明け、初芝、ブービー人気。
彼女は「え゛ー」というナントモ非難めいた声をあげました。新聞は無印だしまあ当然の反応。でもここは勝負できるかな、ってくらいには自信ありましたね。とにかく馬体にムダがなく動きがスムーズかつ力強いという印象。「多分これが逃げるから。逃げ切り期待」枠連で2-4、2-6、2-8の3点に1,000円ずつ。人気薄からなのでヨシトミの枠も抑えました。相手にドウカンチグサとモリカイソウを選んだのは夏の福島だから狙いは牝馬、本命が逃げだから差しタイプ、と単純明快。レース名も「栗子」だから牝馬でしょ、これは冗談半分。ヨシトミの隣に坂井千明騎手がいてちょっと恐いかなと思ったので。あと、橋本広喜という鞍上は当時新進気鋭藤沢厩舎所属のジョッキーということで、あまり悪い印象が無かったんですよね。
彼女はヨシトミから何点か買ってたような気がします。ガラガラのスタンドでレース観戦です。フィアラが逃げると思ったのはマル地だけどダート血統ってわけではないかなという「印象」と馬体が仕上がってて枠も内だし人気もないからという「判断」故なので、浅い経験なりに根拠はちゃんとありましたね、今思えば。その通りの展開になりました、好スタートから躊躇なく出していって先頭に立ちそのまま1コーナーへ。飛ばすでもなくスローに落とすでもなく道中淡々と流れた感じです。
3、4コーナーでスパートして後続を少し離したような気がします。もう絶対残ると思ったのであとは買ってるのが差してくるか。短い直線で青帽と緑帽が迫ってくるのが見えたので「そのまま!そのまま!」大声で叫んでました。ドウカンチグサと並んだところがゴール。彼女と二人で大はしゃぎです。場内はシーンと静まり返ってました。枠連228倍のマンシュウ。
当時の福島競馬って今じゃ信じられないでしょうが、ガラガラって言ってもいいくらいだったので。彼女なんて涙流して「やった!やった!スゴい!」って叫んでて、背後に冷たい空気を感じてちょっとはしゃぎ過ぎたかなーと思ってそのまま結果確認して払い戻すことなく最終レースも買わずにそーっと競馬場から立ち去りました( ´∀` )その夜は福島の街でフツーの中華料理のお店に入り地味に祝杯という( ´∀` )
なんでこんなことを敢えて書いたか、それは私は穴党というわけではなく、何らかの根拠がないと馬券は買えないということを再認識しておきたかったからです。その根拠がパドックの印象であり、競馬新聞の調教タイム(は必ず見てた)であり、陣営のコメントです。予想家の印じゃないんですよね。それも一つの情報には違いないですが「貴方の主観ですよね」ってだけですし、オッズの根拠に多分に影響を及ぼす程度で買う買わないの理由にはならない。
そこだけは昔も今も競馬の変わらない点かなあ。買いたい馬を買ってみよう、インスピレーションを信じてみよう、でないと楽しくないじゃん、って感じをね。あの興奮は忘れられない「良い思い出」であり、どうやってもレース映像も確認できないんですが、決して消え去ることのない「残像」ですね。
今はもう「馬券を買っていること」すら口にしてはいけない日常だけど、ね。
