仕事を終えて北の方角へ車を走らせる。日が暮れるに従って空が晴れ渡り、強い風が吹き荒び、空気が澄んでいく晩秋の空―――
此間は月が綺麗だったと、思い出して空を見渡したのだが何も見えず、あれ、と思った。

漸く頭数が揃って、これで年末年始の繁忙期も何とかなるのかなと思っていたのだが、まだ募集は掛けているのだと、近々面接するので採用になったら研修指導を頼むと、助手席の方からそのような「篩い落とし」の話を聞かされていた。
余計な事は考えたくないのに、色んな事が脳内を駆け巡って、それを振り払うように仕事をこなして、
溜息が出る。参ったな、としか。
私には筋書きを描くことはできない。精々演者としてどう即興を挿むか、各々の事情は承知しても、それが全て叶うでもなく、決めるべき方が決めるという、上下関係とはそのように退屈なものでしかない。何日もの間、空間を共有して知り得たことが、足枷となり纏わり付くだけのことで、流れに身を任せるしかなく。
無力であることの愚かさを、思い知る。
風向きは変わってしまった。ならば風下に立たなければ。
経験を積むということは、穢れるということだ。それを理解するのならば、飲み込めるものを受け入れるしかないのだろう。役目を全うして、例え像が歪もうとも。言葉として伝えてはみて、こういう事にしかならないのなら。
欠け行く月を、眺めながら。

